■亀の子コンクリート考
第一回:コンクリートは強いか ? 小林 映章

一般の人々にとってコンクリートとは固くて丈夫なもの、風雨に曝されても強い,直射日光を受けても、また強大な力が加わっても、傷ついたり壊れたりしない、まさに頑丈なものの代表である。ありふれた機械力をもってしてはびくともしない代物である。それにひきかえ、我々の周りにある有機物は、木材やプラスチックのように丈夫だとされているものでも、簡単に切ったり、ひきちぎったりできるし、ちょっとの熱で溶けたり、変形したり、あるいは燃えて形がなくなってしまうなど、コンクリートに比べるとひどく弱いもののように感じられる。実際身近なところをみても、木材やプラスチックでは大きな橋を掛けることができないし、高層建築物を建てることも許されない。木材で囲ったトンネルなどは炭坑のように常に脱落の脅威に曝されることになる。大規模な構造物は鉄とコンクリートに頼らざるを得ない。

こんなふうにコンクリートの強さを信じている人々にとって、最近の山陽新幹線のトンネル内でのコンクリート片の脱落に端を発した、トンネルや高速道路のコンクリートの破損はショックであった。

コンクリートは本当に頑丈なのだろうか。 コンクリートの強さを表すのに通常圧縮強度や、引っ張り強度や,曲げ強度が使われている。コンクリートのテキストでこれらの数値を見ると、コンクリートは頑丈なものといったイメージとは違って、プラスチックに比して特に大きいとは言えない。伸ばしたり曲げたりするときの強さはプラスチックの方がはるかに大きい。こんなことを頭において、次回から思いつくままにコンクリートに対する有機物の関わりあいを考えてみたい。


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