■私のコンクリート補修物語
第07回:中性化とコンクリート組織 堀 孝廣

毛細管空隙内の水の挙動は、表面張力の影響を受けるため、細孔径が小さい程水が蒸発しにくくなる。従って細孔径と中性化は密接な関係がある。 中性化の速度式が、水セメント比を基準としているのもこの細孔径と関係している。 ただ単にコンクリート中のアルカリ(水酸化カルシウム)の総量で言えば、水セメント比ではなく、単位セメント量を基準としているはずである。

中性化の進行が細孔径の大きさに依存するとわかれば、コンクリートの初期養生が極めて大切であることに気づかれたことと思う。

養生条件と中性化の関係について、上の図を見て頂きたい。普通ポルトランドセメントの場合において、打設1日で脱型し乾燥条件下に置かれた場合と材令7日まで水中養生した場合では、倍以上も中性化深さがことなる。型枠の早期脱型は、強度だけでなく中性化に対しても影響が大きいのである。

また、蒸気養生を行うと、20℃標準養生より中性化の進行が速い。 これらは中性化に限らず、凍結融解に対する抵抗性についても同様であり、細孔径の大きさが影響している。

さて、中性化が進むとコンクリートの組織はどのように変るのだろうか。

(1)重量 中性化の代表的な反応である Ca(OH)+CO→CaCO+HOを考えると、炭酸ガス一分子(分子量44)を吸って、水一分子(分子量18)を放出している。したがって、重量は増加する。

(2)長さ変化 水酸化カルシウムの大きな板状結晶から、ミクロな珊瑚状結晶に変化するため、収縮する。

(3)強度 密度が上がるため、圧縮強度は上昇する。

(4)ポロシチー 理論的には、総細孔量は減少する。特に1ミクロン以下の細孔が減少し、逆に5ミクロン以上は増えるとの報告もある。 しかし、屋外では中性化以外の要因も加わり必ずしも総細孔量が減少するとは限らない。

以下に物性の変化を測定した一例を示す。


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