セルテック株式会社
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■私のコンクリート補修物語
第4部 防錆剤混和による鉄筋腐食対策 堀 孝廣

4-3 鉄筋腐食の評価方法

 防せい剤の実証実験の詳細に入る前に、鉄筋腐食の評価方法について、間単に紹介しておこう。電気化学的評価方法については、日進月歩の世界でまたかなり専門的な分野になるので、ごく一般的に行なわれている方法について紹介しよう。

A:直接的手法

(1) 発せい面積率の測定 この手法は、日本ではもっとも古くから広範囲に行なわれている手法であり、コンクリート中から鉄筋をはつり出し、付着しているモルタル粉をハンマー、ピックなどで除去したのち、透明なシートを鉄筋にぐるりと巻き付け、腐食の起きている部分をマジックで黒く塗りつぶし、あとで黒く塗りつぶした部分の面積率を測定するものである。実際にやってみると、さびにもいろいろな程度がありどこまでをさびとするか、また点さびを一つ一つ正確に塗りつぶすことは実際上不可能である。また、表面さびと孔食のような深く進んださびを区別することができない。
 一般的には、発生段階の腐食、或いは軽微な腐食を評価するのに適した方法と言えよう。

(2) 腐食減量の測定 この方法は、コンクリート中から取り出した鉄筋を10%クエン酸2アンモニウム溶液中に浸漬し、さびのを溶解させて、コンクリートに埋め込む前の鉄筋重量からさび溶解後の重量を差し引き、腐食減量として測定するものである。この方法は、クエン酸2アンモニウムが鉄イオンとキレート化合物をつくるという特性を活かし、酸化鉄と金属鉄の溶解速度の差を利用してさびのみを溶かしてしまおうという方法である。この方法は、発せい面積率の測定に比べて恣意的な要素が少ないが、黒皮もさびと同様に溶解させるので、さびが出ていない部分での減量を黒皮分として補正する必要がある。みがき鋼を使えば、補正の必要はない。またモルタル粉を予め良く落とし、浸漬後もブラシで鉄筋表面をこすったり、孔食の部分はピックでさびを落としていく必要がある。なかなかさびが落ちないからといって、あまり長い時間浸漬しているとさび以外に金属鉄を溶解させ、半球状の孔を空けてしまうことがあるので要注意である。また、さびを落とした後の鉄筋は、アルカリ性の溶液或いは防せい剤を添加した溶液に浸漬し、表面に不動態膜をつくってからデシケーター中に保管するのが良い。
 この方法は、さびが進行し発せい面積率では評価できなくなったり、塩化物イオンによる腐食で孔食が進んでいる場合などの評価に適している。

B:非破壊(間接)測定法

 コンクリート中から鉄筋を取り出して、腐食量を測定する方法は腐食状態を目で見ながら測定できるので、わかりやすい方法だが、そのつどコンクリートを破壊し鉄筋を取り出していたのでは、構造物を傷め、また試験体であれば数がいくらあっても足りなくなってしまう。そこで電気化学的な非破壊検査が行なわれている。

(1) 自然電極電位の測定 非破壊検査で腐食傾向を知る方法として、もっとも一般的に行なわれている方法である。この方法の原理は、基準電極に対して鉄の溶解する力(ポテンシャル)を測定している。従って、自然電極電位(単に電位と省略する)は、腐食状態、腐食量を表すものではなく、さびが進む方向にあるのか、それとも防止されているのかを判断するための指標である。
 以下に、ASTM C876の電位測定方法を紹介しよう。
 コンクリート表面に基準電極を当て、鉄筋と基準電極との間に発生する電位差(電圧)を精密(内部抵抗の大きい)なテスター測定するだけのものである。

 ASTM C876では、基準電極として銅/硫酸銅電極を用いている。銅/硫酸銅電極は、飽和硫酸銅溶液中に銅の棒を挿入し、コンクリートに接する側の先端はポーラスストーンを用い、ごく僅か液がにじみ出るようにしている。この電極の特長は、安価で乱暴に取扱っても壊れ難いところにある。
 測定された電位の評価方法として、ASTM C876では以下の判断基準を示している。

 この基準値は、銅硫酸銅電極を用いた時のものであり、電極として銀塩化銀電極やかんこう電極などを用いたときは、補正しなければならない。
 自然電極電位の測定は、きわめて簡便な方法であるが、この方法のポイントは測定部のコンクリートを湿潤条件にすることにある。充分な湿潤条件にあれば、測定した電位は安定した数値が得られるが、この湿潤条件にすることがなかなか難しい。
 筆者らの試験では、かぶり3cmの場合に丸1日水中に浸漬する必要があった。現場のコンクリートで測定しようという場合には、直前に簡単な水湿しをして測定する場合が多いが、かぶりが極端に薄い場合を除いて、正確な値を得ることはできない。濡れ雑巾のようなものを1日以上前に測定部に貼り付けておくか、鉄筋近傍に小孔を穿ち、そこに水を注入し、しばらくしてから測定するなどのことをすれば、正確な値が得られる。
 筆者等が後述する防せい剤多量添加実験の際に得た、電位と発せい面積率の相関関係の一例を示す。

 上記二つの図から、-350mV vs. CSE(CSEは銅硫酸銅電極Cupper Sulfate Electrodeの略、何電極に対する電位なのかをはっきりさせるためこのような表記をする)を境としてさびが発生していることが確認できた。ASTM C876の-350mVより卑の領域では90%以上の確立でさびが進行しているという評価基準とよく一致していた。このときの測定方法は、試験体を塩水中に浸漬した状態で測定したものである。
 その他、電位は測定時の温度の影響も受けるので、充分な数のデータがある場合には温度の影響についての、考察も必要である。以下に、筆者らが実際の現場で測定したデータを温度との関係から、解析した例を示す。

 自然電位の測定は、幾つかの注意事項はあるが、非破壊状態で鉄筋の腐食傾向を知る上で、たいへん有効な方法である。

(2)分極抵抗の測定 自然電極電位の測定が、腐食傾向のみしかわからないのに対して、分極抵抗はその逆数が腐食速度を表すので、腐食速度を知る上では極めて有効な方法である。
注意すべき点は、自然電位の測定と同様にコンクリート表面に押し当てた電極と鉄筋との間の、かぶりコンクリートを充分な湿潤状態にすることである。この方法は、特別な装置を必要とするので、主に研究用として行なわれている。

 一般には、自然電位法が採用されることが多いが、かぶりコンクリートを湿潤条件にするのが難しいため、電極をコンクリート内に埋め込んでしまおうという考えがある。この場合には、電極のメンテナンスができないので、電極の耐久性が要求される。また埋め込んでしまうため、多くの個数が必要であり、小型化と低コスト化が要求される。
 日本建築総合試験所の永山氏が開発したミニセンサーは、電極材としてニッケル下地に金メッキ施したものを使用しており、電解液を用いないことから耐久性に優れているであろうこと、小型であること(電極本体はφ13mm×7mm程度)から埋め込み型電極としては、現時点で最適なものと考えている。


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