■私のコンクリート補修物語
おわりに 堀 孝廣

 2000年の11月から、『コンクリート補修物語』を連載してきましたが、今回で終了とさせていただきます。長い間、大勢の方に読んでいただき本当にありがとうございました。 皆さんの励ましがなければ、途中で挫折していたものと考えます。当初の計画では、もう少し物語的にトピックスや感想をを交えながら記していければと思っていたのですが、多くの人から「読んでいるよ」と言われると、独断や偏見で他に迷惑をかけてはいけないとだんだん筆が重くなり、無味乾燥な文章になってしまったのが残念です。

 アルカリ骨材反応抑制に関して、亜硝酸リチウムを使用した高圧注入協会ができるような話を伝え聞いています。アルカリ骨材反応による被害を受けたコンクリート構造物の補修方法は未だ手探り状態ですが、亜硝酸リチウムを使用した高圧注入工法は、その抜本的な対策になるものと期待しています。一方、鉄筋腐食による被害を受けたコンクリート構造物の断面復旧には、亜硝酸塩系防せい剤を混入させたセメントモルタルの使用が主流になってきているようで、感無量の思いがします。

 私が珪酸リチウムによる補修工法に接したのが今から30年前、ある塗料メーカーの談話室で何気なく見た雑誌から亜硝酸リチウムを着想してから20年、まだまだ本格的普及には時間がかかることでしょう。しかし、ここまで建築、土木を問わず多数の有名物件や劣悪環境下にある構造物の補修に使用されてきました。その間、多くの材料メーカーや工事業者の方々にたいへんな知識と骨折り、それから「何とか使いこなしてやろう」という気概をいただいてきました。その結果が現在の信頼を勝ち得てきた最大の要因と感謝しております。この物語はここで終了しますが、コンクリートの補修技術はまだまだ発展途上です。年配の方の知識・経験と同時に、若い研究者や技術者の方のオリジナルな発想が必要とされる分野と思います。皆様のご活躍を祈念いたします。

 最後になりましたが、コンプロネットの掲載にあたって長い間励まし続けていただいたセルテックの小河会長、ならびに編集掲載いただいた手島さんに感謝申し上げます。


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