CON-PRO.NET
| トップへ |
伊藤教授の土質力学講座
[ ↑目次へ戻る ]
第5章 土の強さ

5.3 せん断試験
土のせん断強さは、その密度、含水比および圧密度などによって変化する
から、できるだけ実際の破壊を起こす状態に近づけるか、または、その土の
最悪の状態で試験を行なって、設計に使用するのがよい。
せん断試験の方法を大別すると、次のようになる(図−5.8参照)。


また、室内せん断試験を実施するには、せん断力の加え方によって、次の
二つの方法に分けられる。
(1)ひずみ制御型
ひずみの速さを一定にしてせん断を行ない、ひずみと応力の関係を調べ
る方式。
(2)応力制御型
応力を段階的に一定の速さで増加させて、せん断を行ない、応力とひず
みの関係を調べる方式。
ひずみ制御式は機構上、試験を実施しやすく、応力−ひずみ図の極大値、
その他の記録を忠実に表現してくれるなどの利点が多いため、現在は、この
方式がよく用いられている。
また粘性土では、試験中の垂直応力、せん断応力の加え方によって、供試
体に発生する間隙水圧が変化し、そのため、せん断強さが変わってくるから、
供試体の排水条件によって、試験方法を次のように分類している。
1. 非圧密排水せん断試験(UU試験)
試料を圧密することなく、試験中も、間隙水の排出を許さない。盛土荷重
の積み上げが比較的急激であって、その結果、すべりその他の破壊が心配さ
れる場合に適用する。
2. 圧密非排水せん断試験(CU試験)
試料を圧密したのち、試験中は間隙水の排出を許さず、せん断試験を行な
うもの。プレロ−ディング工法などで地盤を圧密強化した後、一挙に盛土な
どの載荷を行なう場合の、破壊に対する検討をするときに実施する。
3. 圧密排水せん断試験(CD試験)
試料を圧密したのち、せん断試験中もゆっくり力を加え、自由に間隙水の
排出を許すもの。圧密がほぼ終了してから載荷が行なわれるような、比較的
ゆとりのある工事において、安全を検討する場合に適用される。

5.3.1 一面せん断試験
図−5.9に示すような、上下に分かれたせん断箱に試料を入れ、一定の
垂直応力のもとで、上箱または下箱にせん断力を加える。そのとき試料に生
ずるせん断抵抗を、検力計で測定できるようになっている。また圧密過程で、
間隙水の排出を容易にするため、歯形のついた透水板および水抜き孔が下に
ついている。供試体は直径60mm、厚さ20mmの円板形のものを標準とする。垂
直荷重は、試料が現場で受ける応力の範囲を含んで、4段階以上に変えて試
験する。また、せん断速度は間隙水圧を考慮しない場合1mm/min以上で、間
隙水圧を考慮する場合は0.05mm/minで行なうのが標準である。せん断中のせ
ん断力、水平変位および垂直変位測定用ダイヤルゲ−ジの読み取りは、連続
した応力−変位曲線(図−5.10参照)が描けるような間隔で行なう。た
とえば最初の2分間は15秒ごと、2分をこえた後は30秒ごとに記録するなど
が一例である。せん断はせん断応力がピ−クを越えた後一定値に落ち着くか、
あるいは、せん断変位が8mmに達するまで続けられる。

これらの試験結果をそれぞれの垂直応力について、図−5.10のように、
水平変位−せん断応力曲線(τ−D曲線)、および水平変位−垂直変位曲線
(Δh−D曲線)にまとめる。せん断力にピ−クのある場合は、その垂直
応力に対するせん断強さτf とする。ピ−クが生じない場合は、8mmか、ま
たはせん断開始時の供試体厚さの50%のいずれかの小さい方に達したときの
τを、その垂直応力に対するせん断強さとする。


また図−5.11のように、横軸に垂直応力、縦軸にせん断強さを、それぞ
れ1:1にとって整理し、各段階の垂直応力とせん断強さとの直線関係から、
土の内部摩擦角ψと粘着力cを求める。


ここで、垂直応力σ、およびせん断応力τは、次の式で求められる。


σ=P/A ・・・・・(5.7)
τ=S/A ・・・・・(5.8)

ここに、P:垂直荷重(kg)
A:供試体の断面積(cm2
S:せん断力(kg)
一面せん断試験機は、試験の操作が簡単であること、粘性土および砂質土
の両方について試験ができることなどのため、試験結果がやや安全側に出す
ぎるなどの欠点はあっても、なお広く用いられている(図−5.12参照)。



5.3.2 一軸圧縮試験
圧縮試験をして間接にせん断強さを求めるもので、図−5.13に示すよ
うな直径 3.5cmまたは5cm、高さは直径の2倍の円柱形の供試体を、上下方
向から加圧する。加圧速度は、ひずみ制御型の場合、毎分1%圧縮ひずみを
生ずるような速さで加える。ピ−クを越えるまでは圧縮量9.25mm後とに、時
間、検力計、圧縮量測定用ダイヤルゲ−ジの読みを記録し、それ以後は0.50
mmごとに記録する。検力計の読みが最大となってから、引続き3%以上圧縮
を続ける。ただし、ひずみが15%に達したらやめる。これらの結果から、図
−5.14のような応力−ひずみ曲線を描き、最大圧縮応力を求めて、これ
を一軸圧縮強さqu とする。一軸圧縮試験は主として粘性土の試験に用いら
れるが、とくにψ≒0の場合は、図−5.15のようにク−ロンの破壊包絡
線は水平となる。


また一軸圧縮のため、側圧σx=0 であるから、モ−ルの円も、図−5.
15のように、直径の一端は座標原点を通ることになり、(5.9)式が成立し、
粘着力は一軸圧縮強さの半分に等しい。
c=qu/2 ・・・・・・・・(5.9)
また5.1 でも述べたように(図−5.4参照)ク−ロンの破壊包絡線とモ
−ルの円との接点Tをのぞむ角∠TOA=90゜の半分が、供試体における破壊
すべり面の傾斜角に相当するから、ψ=0のときの供試体の破壊は、x軸(水
平線)に対して約45゜の傾きで起こる。



5.3.3 三軸圧縮試験
圧縮試験を行なって、間接的に土のせん断強さを求める試験であるが、供
試体のあらゆる部分に一様な応力が加わるから、現在のところ、最も正確に
土のせん断強さを決定することができる試験と考えられている。
試験装置の主要部分は、次の三つに大別できる(図−5.16参照)。
(1)三軸圧縮室・・・・・供試体を入れ圧縮する部分。
(2)載荷装置・定圧装置・・・・荷重を加えたり、その荷重を一定に保つ装置。
(3)間隙水圧測定装置・体積変化測定装置・・・供試体内の間隙水圧、およ
び供試体の体積を測定する装置。

このうち、とくに重要な三軸圧縮室の構造略図を図−5.17に示す。
底盤、上ぶたおよび透明プラスチック円筒よりなるが、上ぶたとプラスチッ
ク円筒は、供試体の出入りの際、底盤から取り外すことができるようになっ
ている。


供試体は、直径3.5~5cm、高さ8~12.5cmの、直径に対し、高さが2~
2.5倍の寸法のものがよく用いられる。側圧および軸圧を変えて、3個以上試
験するのが普通である。特殊な成形わくを用いると、砂および砂質土の試験
もできる。
供試体は薄いゴム膜で包み、圧縮室内にセットする。水、あるいはグリセ
リン水で一定の側圧をかけて圧密した後、過剰間隙水圧が発生しないような
速さで、軸方向の力を加えて圧縮する(排水試験)。
一般のひずみ制御型、非排水試験の場合、軸方向荷重の圧縮速度は、毎分、
供し体の高さの1%のひずみを生ずるように加え、読みは供試体の高さの1/
500ごとに記録するのが普通である。圧縮は、検力計の読みが最大となってか
ら、または供試体のひずみが15%を越えてからも、なお、引続き1分間は行
なうようにする。
以上の試験の結果を、横軸に軸方向の圧縮ひずみ、縦軸に軸差応力をとり、
8にような応力−ひずみ曲線を描く。これから軸差応力の最大値(σ−σ)f
を決める。軸方向ひずみε(%)および軸差応力(σ−σ)kg/cm2は、(5.10)、
(5.11)式から求められる。


ここに、Δι:軸方向の圧縮変形量(cm)
L:供試体の最初の高さ(cm)
σ:土中の上下方向主応力(kg/cm2
σ:液圧(側圧)(kg/cm2
P:ピストンによって加えられる軸方向の力(kg)
A:軸方向のひずみε(%)に対する供試体の平均断面積(cm2
:供試体の最初の断面積(cm2
軸方向の全圧縮応力σ(=P/A+σ)と、そのときの側圧σを一組と
して横軸にとり、これらを直径とするモ−ルの円を、図−5.19のように
描く。これらの円に共通接線を引くとき、この直線と縦軸の交点が粘着力c
を与え、直線の傾きが内部摩擦角ψを与えることになる。


供試体の粘着力、および内部摩擦角を求めるには、次のような方法もある。
すなわち、横軸に最大主応力差(σ−σ)fをとり、実験値を結ぶ直線を決
定する。この直線の傾きをm 、縦軸を切る長さを∫ とすると(図−5.
20参照)、粘着力cと内部摩擦角ψは、(5.12)式および(5.13)式で与えら
れる。


5.3.4 ベ−ンせん断試験
現場で、試験機をそのまま土中に挿入して、土のせん断強さを求めようと
する原位置試験の一種で、調査しようとする土を乱さずに試験できる点が優
れている。そのため、きわめてやわらかい粘土その他の試料採取、および成
形の困難な土に適用して便利である。また最近は、試料採取管内の軟粘土に
ついて、室内試験のできる装置も開発されている。
図−5.21のような4枚の直交した羽根を、静かに粘土地盤に圧入し、
これを回転せしめるような力を与える。土は、回転モ−メントのための円筒
形の上下面、および円周面ですべるが、そのまさに破壊せんとするときの回
転モ−メントをMmax とすると、粘土の粘着力c(kg/cm2)は(摩擦力=0とし
て)、(5.14) 式で求められる。




[ ↑目次へ戻る ]
| トップへ |

コンプロネット(コンクリート・プロダクツ・ネットワーク)/ 企画・運営:セルテック株式会社/ 技術サポート:有限会社ウインタースキン/
©1999 Concrete Products Network All rights reserved.