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伊藤教授の土質力学講座
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第5章 土の強さ

5.5 粘性土のせん断特性
粘性土は圧縮性や弾性があり、また、その構造内に吸着水を含んでいるこ
となどで、砂質土とは大いに異なっている。一方、砂質土と同じく間隙水圧
の影響も受けるのであるが、砂は透水性がよいので、衝撃に近いような急激
な載荷を除いては、ほとんど瞬間的に排水してしまうのに、粘性土は非常に
長い時間にわたって間隙水圧の影響を受ける。これらの性質が、粘性土のせ
ん断特性を非常に複雑にしている。

5.5.1 練返し効果
粘着性の土の乱さない試料と、この含水比を変えないようにして、よく練
り返した試料とでは、せん断強さが異なることが知られており、一般に練り
返すと強度は低下する。これは粒子の構造、吸着層および団粒構造などが破
壊するためであると考えられている。このうち、吸着層の乱れによる強度の
減少は、含水比を変えないで放置すると回復する。この現象は、シキソトロ
ピ−といわれ、打ち込み後の杭の支持力増加や、締め固めた土の強度増加に
関係がある。
乱さない粘性土の一軸圧縮強さqu と、練り返した粘性土の一軸圧縮強さ
qurとの比を、鋭敏比(St)というが、その表わし方には次のような二つの
方法がある(図−5.26参照)。

普通は、(5.16)式を用いて鋭敏比を求めているが、練り返した試料で、強
さのピ−クが現われないときは15%のひずみに対する圧縮強さをqurとする。
多くの粘土は、St の値が2~4の間にあり、鋭敏な粘土は4~8、超鋭敏
粘土は8以上にもなる。

5.5.2 圧密先行荷重および排水の影響
飽和粘土のせん断強さに影響を与える主な要素は、圧密先行荷重の大きさ
と排水条件と考えられるので、それらに焦点をしぼって説明する。
1. 排水せん断試験
排水が大部分行なわれているので、せん断強さは土粒子間の摩擦で決ま
り、土に加わる応力の破壊包絡線は、土の場合と同じく原点を通る直線と
 なる。内部摩擦角ψd については、まだよくわかっていないが、平均値
として30゜よりやや小さく(28゜~30゜)、間隙比とともに変わると考えられて
いる。大きい圧密先行荷重pを受けた粘土では、p より小さい荷重
では図−5.27のように、破壊包絡線はいくらか曲がる傾向がある。

2. 圧密非排水せん断試験
圧密非排水せん断では、ゆっくり加わる圧密荷重が粘土の間隙比を減
少させ、含水比も低下させるので有効応力として働く。しかし、せん断
は急速に行なわれるので、かなり間隙水圧の方にまわってしまう。その
結果、破壊包絡線の原点を通り横軸とψcuの角をなす直線となる(図−
5.28参照)。このψcuは見掛けの摩擦角とよばれ、多くの粘土におい

ψcu=ψd/2 ・・・・・(5.18)
のような関係があり、ほぼ、14゜~20゜の間にある。p以下で、破壊包
絡線が曲がるのは、排水せん断の場合と同じである。

3. 非排水せん断試験
粘土中の初期有効応力は、その試料があった場所の上載荷重による圧
密で形成される。非排水せん断では、垂直荷重や、せん断応力の増加は非
常に早いので、すべて間隙水圧の増加になってしまい、有効応力は増加しな
いため、せん断強さは垂直応力に関係なく、図−5.29のようにcu =一
定で破壊包絡線は、σ軸に平行な直線となる。破壊時のせん断強さは(5.9)式
で与えられる。
τf =(σ−σ)/2=cu ・・・・・・(5.19)
また、見掛けの内部摩擦角ψu=0である。


5.5.3 不飽和粘土のせん断強さ
道路やア−スダムの盛土のように、人工的に作る土構造物は一般に不飽和
である。このような不飽和粘土の破壊包絡線は、σ軸とψ' の傾斜をなし、
τ軸のc' を横切る直線に近い。しかし、非排水せん断で垂直応力を増加さ
せると、試料内の空気が圧縮して有効応力を増すので、図−5.30のよう
に、垂直応力とともに強度が増加する。
しかし、気泡が間隙水の中に溶け込むようになると、強度増加はしだいに、
ゆるやかとなり、飽和状態に達して強度増加はやむ。この状態ではψ'=0
となる。したがって、正しくは破壊包絡線は上に凸の曲線になる。
不飽和粘土においてc'、ψ'を決めるには、ある応力範囲を定めて、その
範囲内の包絡線に近い直線を用いて、c'、ψ'を定めなければならない。



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