■コンクリートの締め固め 「なぜコンクリートは振動によって締固まるのか」
3.なぜコンクリートは振動によって締固まるのか

もう少し詳細に振動締固めの原理を見てみましょう。

練られた直後のコンクリートに振動を与えると、骨材(砂などを細骨材、砂利を粗骨材と呼びます。)の動きは、与えられた振動加速度に比例し、その質量に反比例するため、大きな骨材は動きが少なく、小きい骨材ほど多く動きます。

つまり、バイブレータからコンクリートへの振動の伝播過程では、振動周波数はほとんど変化しないのに対して、振幅は距離による減衰を生じるのです。こうして振動を与えた点を中心として、セメントペーストと細骨材は液状化し、粗骨材のすきまをうめ、空気泡などの空間を満たし、あるいは上方へと押し上げて密実になってゆきます。

すなわち、コンクリートは内部振動機の水平方向の振動によって液状化し、重力によって締固まるのです。こうして適当な時間、バイブレータをかけ続けるとさらに遠方にまで振動が伝わってゆきます。つまり振動源の近くはより密実になり、次にこの密実な部分を通じて次の部分に及び、漸次遠方に達してゆくのですが、密実になった部分で振幅は吸収されてゆきますので、振動は減衰し振動効果の範囲限界が生じます。

この限界は、コンクリートとバイブレ−タ−の条件により異なりますが、大まかには、

 1  太い すなわちより大きな振動加速度を発生する起振部を内蔵しているバイブレータ
2 振動伝播に適した振動部形状をしているバイブレータ (当社HBM-Z )
3 適切な加振時間

の3要素を考慮する必要があります。

ちなみに、教科書には「過度の振動締固めは、骨材分離を生ずる」と警告されていますが、コンクリート二次製品工場でごくまれにと大学の実験室以外では「過度の振動」を経験した事はありません。打設失敗の過半には振動時間の不足が関係しています。

私どもの ルール オブ サム (経験則) は

 1  少なくとも骨材最大粒経と同じ太さのバイブレータをつかえ
2 有効範囲はバイブレータ直径の10倍以下と思え
(つまり直径50mmのバイブレータは50cm以内で差しかえろ)
3 最低一ヶ所 18秒はかけろ。

ということです。


*この講座はエクセン株式会社の協力・承諾を得てお送りしています。

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