■夢追人のコラム:1999年10月27日号
No.06:そして再び、原理原則に忠実に! 夢追人

前回、技術者は決して原理原則から目を逸らしてはいけないことを強調した。
今回もその点重ねて強調したい。
東北の知人から、全国コンクリート製品協会、東北支部発行の「全コン東北支部会報」No72号(1999,9,15)が送られてきた。その中に、会報編集委員長等による建設省東北地方建設局長のインタビューが掲載されている。一部を引用してみる。

編集局「............、コンクリート製品は工場で管理されたものだから、良いものはどんどん活用する、と仰っていただいていますが、欠点もいろいろあると思います......」。
局長「土木工事合理化委員会の中のコンクリート部会でお話したことがあるのですが、歩車道境界ブロックに凍結融解が目につきます。コンクリート製品は、工場で十分な管理のもと生産されているので品質が良いと思いますが、中には製品がボロボロになっているものがあります。これは品質に対する信頼性を損なうものであり、ひじょうに目につき易いものですから、十分注意してほしいと思います。」
「可変側溝は大きな割に薄手の製品が多いことから、クラックが発生しているものがあります。実際には難しいことが多いのでしょうが、需要予測を十分に立てて、製造工程や養生管理を万全を期してほしいと思います。」そして、新製品、大型化について、「コスト縮減に役立つものをどんどん送り出してほしい。」、と結んでいる。

このインタビューのなかで、編集委員長は凍結融解について、過去の状況と経緯そして現状を説明したが、可変側溝のクラックについては一言も言及していない。
なぜなのかと思うと同時に、この問題の根が深く、複雑な背景があるように感じられた。
局長が、「コスト縮減に役立つものをどんどん送り出してほしい............。」と、発注者のニーズを述べていたが、この可変側溝こそコスト縮減を20余年前に実現させた、まさにユーザーサイドに立った画期的な製品であったはずだ。この製品の出現のため、従来型の側溝製品の需要が激減し、大きな打撃を受けた業者もあった。これは競争社会の論理であり、仕方がないことであるが、この種の競争はあくまで公正なルールを建前とする。

直接、人命に影響しないとされる側溝製品であっても、公共の財産となるものは、発注者を含め係わる技術者は、現状認知され、受け入れられた技術思想やルールに先ず忠実でなければならないと思う。原理原則から逸脱した冒険は社会的なコンセンサスがあって初めて可能になる。コスト縮減という目的のために、築き上げられた技術ルールを無視していいはずがない。

前回の引用になるが、「市場において競い合う前提として、同一のルールの下で行われることが公正な社会といえる。反則は容認してはならないのだ。いわゆるブラックボックスの透明性を高めるためにも、技術者は原理原則から目をそらしてはいけないのではないか。」を重ねて主張したい。
トンネル、高架橋など大規模構造物にはじまる最近のコンクリート不信が、身近な側溝や、歩車道境界ブロックなどまで広がらぬよう、技術者は心していく要があろう。それには、愚直なまでに原理原則に忠実が一番だ、と思うがどうか?


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