Re[2]: ASRへ実施した表面被覆の不具合について

yuu wrote.

>構造物は無筋でしょうか？鉄筋があるかないか、構造物の重要性でASRの補修・補強方針は全く違います。
>
>残存膨張が残っている構造物に対して表面被覆材を使用すると、必ず被覆材の膨れや割れなどが生じ再劣化を起こします。使うのであれば、構造物に拘束効果のあるものを施した後に施工するか、あるいはある程度追従する材料を選定する必要があります。
>もう一つ、残存膨張が残っている構造物にたいして表面被覆をすることは、今後の経年劣化状況を把握できなくなり、維持管理上問題が生じます。
>
>ASRで残存膨張が残っている構造物の補修・補強に関しては塩害と違い単純ではありませんので、それなりの調査、試験、専門知識のある方からの助言などが必要不可欠です。

どうもＡＳＲ対策の表面被覆工法について、必ずしも充分なご理解をいただいていない方が多いようですので一言。
ご承知のようにＡＳＲの発生要因としては、①反応性鉱物の存在、②一定量以上のアルカリの存在、③水の存在、の三条件がそろった場合に反応が起こり劣化が進行します。したがって、表面を被覆し水の供給を遮断することは反応の進行の抑制やゲルの吸水膨張の抑制の観点から、抑制手法としては効果的なものであり、これは無筋でも鉄筋コンクリートでも、効果の程度の差こそあれ抑制手法の一つとして検討・導入に値するものと考えられます。
ただし、表面被覆工法については、導入に当たって効果が期待できない場合があることも良く知られており、国土交通省の「アルカリ骨材反応による劣化を受けた道路橋の橋脚・橋台躯体に関する補修・補強ガイドライン(H20.3)」等でも、その形状等の制約から、外部からの水分供給を絶つことが困難な部材や部位の場合にはその効果が期待できないことが明記されています。
また、表面被覆工法は①内部の水分については水蒸気としての外部への逸散を可能とする反面、外部からの水分の浸透を防ぐ「撥水系表面被覆工法」と、②外部・内部両者からの水の動きを一切遮断する「遮水系表面被覆工法」の二種類に大別され、現在は被害構造物を完全に乾燥させてから表面被覆することが困難なことなどから、①の撥水系表面被覆工法を採用することが前記指針等でも推奨されております。
ここで、今回のご質問の内容を検討してみますと、失敗の原因としては、半分が川の中の水没している構造物であるのに、表面被覆工法しかもエポキシ系の遮水工法を採用したことでしょう。構造物が何なのか、また劣化程度がどのていどなのかが記載されていないので判断しにくいのですが、表面被覆時には水を堰きとめて構造物に被覆を施しているようですが、このような工事では充分構造物を乾燥させることはできませんし、多分フーチング部や構造物の底部まで全て表面被覆を行っているとは考えられません。したがって、側面部のみ遮水処理しても底部からの水の供給を阻止することはできませんし、水中部の被覆材は流水によるキャビテーションや土砂による磨り減り作用を受けるわけで、この部分についても長期的な遮水効果を保持することは困難なのではないでしょうか。今回ご指摘の被覆材表面の膨らみは、多分構造体内部に浸透した水分(構造体内の残留水分の影響もあるかもしれませんが)が、気中部に拡散し、期中部分の構造体の日射の影響等による表面温度の上昇に伴い水蒸気となって体積膨張し、表面の被覆材を押し上げたのが原因と考えられ、この面でもエポキシ系の遮水系被覆材の選定が裏目に出ているのではないかと考えられます。

ミネルヴァ

😃: 0 😮: 0 😲 : 0

2009-04-25 14:54:23

2009-04-25 14:54:23