■亀の子コンクリート考
第二十九回:多孔質コンクリート構造物の耐久性 小林 映章

近年、生物対応のコンクリート護岸ブロック、緑化コンクリート擁壁、透水性コンクリート舗装等々への要望が高まり、多孔質コンクリート構造物の需要が増えてきている。さて、多孔質コンクリート構造物の強度、耐久性はどのようにして確保されているのであろうか。

緻密構造のコンクリート構造物の耐久性は、内部に鉄筋を通し、コンクリート自体の組成も十分研究されて対策が講じられている。しかし、コンクリートも多孔質となると大分事情が変わってくる。多孔質コンクリートでは水が内部まで浸透するため、普通の鉄筋は錆が生じて使えない。そのため鉄筋を使う場合には、鉄筋表面に防錆メッキを施すなどの処理が必要である。また、多孔質層と鉄筋を入れた緻密層を積層した構造も採用されている。しかし、鉄筋表面に防錆メッキを施しても、メッキの耐久性はコンクリートの寿命からみると短いもので、とてもこれで満足するわけにはいかない。鋼鉄に替わる錆びない補強筋、例えばプラスチック筋も探索されてきたが、熱膨張係数がコンクリートと異なるとか、コンクリートに対する親和性が十分でないなどの理由で、未だ適合品が得られていない。多孔質層と鉄筋入り緻密層よりなる2層構造は強度、耐久性共に良好であるが、2層構造では使用目的に合致しないため採用できないものも多い。

多孔質コンクリート構造物の耐久性を確保するために、防錆メッキを施した鉄筋を用いるとか、2層構造にするなどの方法を採っているのは、技術的にこうする以外仕方がないからである。出来得るならば多孔質層だけで耐久性のある構造体を造る技術が欲しいものである。しかし、このような技術の開発は容易ではなく、従来の技術の延長では難しいように思われる。

鉄筋の類は用いず、多孔質で丈夫な構造体となるとどのようなものが考えられるであろうか。その一つは、多孔質構造は従来のままで、モルタル成分の組成を強靭なものに変えて、強靭な結合材で骨材を相互に結合することである。この方法は補強用ポリマーを用いることで実用化している。しかし、十分な強度と耐久性の確保となると、まだまだ不十分で、使用するポリマーを、設計・合成の段階から検討し直す必要があろう。強力に検討すればかなり希望が持てる方法と思われる。

従来に無い、全く新しい方法としては、多孔質構造を変えることが考えられる。多孔質層を形成する孔を、多角形柱の空室で近似すると、外部応力に対して強いのは六角柱、あるいはそれ以上の多角柱よりなる空室と考えられる。したがって、六角柱から円柱までの空室を造れば、外部応力に強い多孔質体が出来そうである。自然界には、蜂の巣のように部屋の壁が薄い膜で出来ているにもかかわらず丈夫なものがある。自然は蜂の巣状構造をとると丈夫な多孔質体が形成できることを教えている。微細な蜂の巣状ブロックがつながったような多孔質コンクリート構造体が造れないものであろうか。


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