■亀の子コンクリート考
第三十八回:即脱コンクリート技術の魅力は尽きない 小林 映章

即脱コンクリート製品は高い生産性、したがって低価格でコンクリー製品を製造し得ることから生まれた。当初は一般空洞ブロックのように、その品質が他のコンクリート製品に比べるといかにも粗悪であった。しかしその生産性の良さは低価格で製品を市場に出すことができることを意味し、現在のように品物が良くても高価格では売れないという時代になると以前にも増して魅力的な技術となる。

前回即脱と高流動化について述べたが、これは自動車と自転車の関係によく似ている。勿論、方や製造方法であり、方や物であるが、両者は観かたにより類似してくる。品質の良否(あるいは高級であるか否か)を横軸にとり、縦軸には、即脱では生産性(あるいはそれに伴う製造価格)、自転車では扱いの手軽さ (あるいは小回りの効く便利さ)をとると下の図のようになる。

自転車は自動車が普及する前から庶民の乗り物として可愛がられていた。その後自動車が想像を超えた普及をしたが、自転車が衰えることはなかったし、無くなることなどは考えられない。逆に自転車は簡単に入手でき、自動車の通れない道でも人と交じり合って乗り廻すことができ、どこにでも留められる便利さ、手軽さがあって、この社会に厳然たる地位を確保している。自転車は減るどころか、逆に増え、普及車であるママチャリに加えて、マウンテンバイク、エンジン付きバイクなど高級品も増え、生産性や手軽さを損なうことなく高級領域を侵蝕している。

即脱コンクリート製品も自転車と同じで、高流動技術が出ても衰えることなく、その生産性の良さを買われて大型製品や複雑な製品など、従来流動性コンクリートで作られていた領域に入りこもうとしている。従来の即脱製品技術の特長である生産性を落とさずに製品の品質を向上させる技術も向上し、肌面がきれいで、高い強度と優れた耐久性を持った即脱製品が生まれつつある。また機能的にも透水性コンクリートのような空洞コンクリートブロックの域をはるかに超えたものが現われ、この状況はますます発展することが予想されている。

安くて便利なものは、たとえ始めは質が余り良くなくても人々に愛用され、それが牽引力となって質の改良が進み、さらに需要が高まるものである。


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