■私のコンクリート補修物語
第3部 塩害による鉄筋腐食 堀 孝廣

3.11.2 飛来塩分

 飛来塩分によるコンクリート内への塩化物イオンの侵入については、数多くの報告がある。飛来塩分(海塩粒子ともいう)とは、海水が風の力により空気中に巻き上げられ、塩化物イオンを含んだ水滴、或いは水分が蒸発し塩の粒子として、陸上部に運ばれてくる塩分である。飛来塩分の影響は、特殊な地域を除けば海から100m以内で極めて大きく、コンクリート表面の塩化物イオン濃度は、30kg/mに達することもある。しかし、500mも離れると無視できるほどに小さくなるが、季節風の強い日本海沿岸や台風の襲来の多い地域では、海から1km離れていても高い塩化物イオン濃度が検出されることがある。新潟県沿岸の飛来塩分量の調査結果をみると、親不知海岸高架橋での飛来塩分量は飛びぬけて大きいが、すぐ近くにある子不知高架橋や姫川橋などでは、わずかしか測定されていない。砂浜か岩礁かなどの地形的な影響、消波ブロックの有無、樹木など遮るものがあるかどうかなど、個別条件により影響は大きく異なる。新しく海岸近くにコンクリート構造物を建造しようとする時は、もし近くに、同種のコンクリート構造物があれば、中の塩化物イオン量を分析してみるのが良い。それによって、種々の対策を検討することができる。


前のページへ目次のページへ次のページへ