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伊藤教授の土質力学講座
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第8章 基 礎(地盤の力学)
8.2 地盤の安定(土の支持力)
地盤の安定、すなわち土の支持力とは、土中に破壊を起こすこと泣く、ど
れだけの荷重を支えるかという土の支持能力を言う。これはとょうど、はり
が破壊することなく支えうる荷重を決める問題に似ている。しかし土の支持
力は、土の強さばかりでなく、加わる荷重の大きさ、およびその分布なども
関係して決まるものである。荷重がゆっくり、その大きさを増しながら土に
加わるとき、土は応力−歪曲線に類似した荷重−沈下曲線を描きながら変形
する(図−8.2参照)。そして限界荷重Qc に近づくと、変形の度合いは
急激に増加し、荷重−沈下曲線は、土中に破壊が生じたことを暗示する最大
曲率の点を通って折れ曲がる。土の性質によっては、また異なった曲線が得
られることがある。密な砂および非鋭敏な粘土では急激な破壊の起こる全般
せん断破壊を示すが、ゆるい砂や鋭敏な粘土では、図−8.2のような進行
性の破壊である局部せん断破壊の形をとる。

実際に土を掘削した結果、および基礎の模型実験から、地盤の破壊は、図
−8.3のような、曲面に沿うせん断破壊やすべりから成ることがわかる。
破壊荷重を決めたり、破壊面を明確に決定する解析的な方法はまだ確立さ
れていないが、破壊状況を観察したり、実際の土を単純化した結果に基づく
多くの近似解は得られている。これらのうちのいくつかは合理的なもので、
また信頼すべき結果を与えてくれる。
浅い基礎の載荷様式は、一般に次の三つの型が代表的なものと考えられる
ので、主として、これらについて記述する。
(1)帯状基礎・・・・・・壁や長くせまいフ−チングなどの例に見るように、一
定幅の長い基礎板で伝えられる分布荷重となるもので、二次元の取り扱いが
できる。
(2)正方形基礎・・・・正方形の基礎板から分布荷重が伝えられるもの。
(3)長方形基礎・・・・長方形の基礎板から分布荷重が伝えられるもの。
(2)、(3)は、三次元的な設計を行なわなければならない。

8.2.1 飽和粘土の支持力
飽和粘土に関しては、τf=c のせん断強度(5.2および5.5参照)が、支
持力解析にもよくあてはまることが知られている。本項で、帯状基礎の支持
力に関する簡単な解析をするが、支持力の問題には多くの要素が複雑にから
みあっていること、しかし一方では、簡単な解析でも基礎設計にはかなり有
用であることを知ってもらいたい。
構造物の荷重は、幅bの帯状基礎によって地盤に伝えられるとする。帯状
基礎の真下では、図−8.4(a)に示すように、三軸圧縮試験の供試体が受
けるのと同じ圧縮状態になるものとする。すると、基礎真下の領域Ⅱの土の
高さは、破壊面の角度αで決まりh=b・tanα となる。破壊時における垂
直方向の最大主応力は、(破壊荷重qc)+(領域Ⅱの土の自重による応力)で
ある。
一方、最小主応力は、領域Ⅱに隣接する領域Ⅰの抵抗σ.である。した
がって、領域Ⅰもまた、三軸圧縮試験の供試体のごときものであり、領域Ⅱ
が直立するに比べ、領域Ⅰは横たわった形で応力を受ける。荷重qc によっ
て図−8.4のように破壊面が生じ、基礎の下にある領域Ⅰ、Ⅱは破壊する。
領域Ⅰで垂直方向に働く最小主応力σ. は、土の自重(γb/2)tanα
によって起こる平均応力である。破壊を引き起こす水平方向に働く最大主応
力は、図−8.5のモ−ルの円から求められる。


領域Ⅱにおける最小主応力σ. は、領域Ⅰの最大主応力σ.に等しい。
したがって、領域Ⅱの最大主応力は図−8.5から

より正確な解析の結果から
鋭敏比<3の粘土 qc=(π+2)c=5.14c ・・・(8.1b)
鋭敏な粘土 qc=πc=3.14c ・・・・・(8.1c)
このような簡単な解析結果でも、多くの工事に関してよい指針となってい
る。
もしも、図−8.6(a)に示すようなq' の荷重が、基礎のまわりに働い
ているなら、図−8.4(c)の領域Ⅰに想定する三軸圧縮試験の供試体は、
σ.(=(γb/2)tanα)に代わって、σ=q'+(γb/2)tanα の最小
主応力を受ける。したがって、図−8.5のモ−ルの円は、二つともq' だ
け右側に移動することになり、(8.1a)の支持力式は
qc=q'+4c ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(8.2)
この式は、地表に載荷があると、粘土の支持力は増加することを示してい
る。同じようにして、図−8.6(b)のように、基礎が地表下Df の根入り
を持っている場合も支持力は増加する。この場合支持力は
qc=γ・Df+4c ・・・・・・・・・・・・・・・・・(8.3)
ここに、γ:土の単位重量(t/m3
実験によると、粘土上の正方形基礎の支持力は、帯状基礎の支持力の1.3
倍であることがわかっている。したがって、
平均の場合 qc=4c×1.3=5.2c ・・・・(8.4a)
非鋭敏な粘土の場合 qc=5.14c×1.3=6.7c・・(8.4b)
鋭敏な粘土の場合 qc=3.14c×1.3=4.1c・・(8.4c)
また、根入りがある場合の正方形基礎の支持力は、帯状基礎の場合と全く
同じである。
長方形基礎の支持力は、帯状基礎と正方形基礎の場合の中間に入り、近似
的に
qc=(1+(0.3b)/L)4c ・・・・・・・・・・・(8.5)
ここに、L:長方形の長辺の長さ(m)


8.2.2 砂質土の支持力
砂や、礫を多く含む粘着性のない土の支持力は、飽和粘土で述べたと同じ
考え方で、まず、帯状基礎の解析から始める。この場合、土のせん断強さは、
次の式で与えられる。

τf=σ'tanφ
ここに、σ':有効応力 φ:内部摩擦角

そして、基礎直下の地盤における破壊面の最小主応力σ に対する角度は、

α=45°+φ/2

一方、領域Ⅰにおける平均垂直応力は、飽和粘土の場合と同じく(γb/2)
tan(45゜+φ/2)で、領域Ⅰの土の自重によるものである。これは領域Ⅰの
最小主応力であるから、最大主応力はランキンの土圧公式(6.1参照)によっ
て、
σ1.Ⅰ=σ3.Ⅰ・tan2(45゜+φ/2)=(γb/2)tan2(45゜+φ/2)

これは図−8.7のモ−ルの円および図−8.4に見るように、領域Ⅱか
ら水平方向に働く。したがって、基礎直下の領域Ⅱにおける垂直応力は、次
の力より大きくなることはない。



(γb/2)tan(45゜+φ/2)+qc=σ3.Ⅱ・tan2(45゜+φ/2)
=(γb/2)tan5(45゜+φ/2)

∴qc≒=(γb/2)tan5(45゜+φ/2) ・・・・・・(8.6)

tan(45゜+φ/2)≫tan(45゜+φ/2)であるので、(8.6)式は、(γb/2)
tan(45゜+φ/2)を省略しているが、そのために生じる誤差はわずかである。
しかし、φ>35゜ になる場合は、(8.5) 式は、やや不経済になるから注意を
要する。

8.2.3 基礎幅、土の単位重量、および内部摩擦角が支持力に与える影響
砂質土の支持力は、基礎の幅(b)、土の単位重量(γ)、および内部摩
擦角(φ)によって大きな英気用を受ける。一般に支持力は、載荷面積の幅
(b)が広がると増大するので、実際、砂質地盤では小型の基礎では危ない
ときでも、大型基礎にすれば常に安全なのである。また支持力は、単位重量
の大きさとともに増加する。密に締め固められた土は、ゆるい軽いものより
単位重量(γ)が大きいから、前者は後者より大きい支持力を持っている。
地下水面が基礎の底面より上にあると、土の有効単位重量を減らす(約半分
近くなる)から、支持力は減少すると考えるべきである。最も重要な要素は、
内部摩擦角φであって、φのわずかな変動でもtan(45゜+φ/2)には大きく
ひびく(表−8.1参照)。


以上のことから、砂や礫を締め固めることは、γおよびφを増大させるこ
とになり、支持力を大きく増加させる。
また、土の表面に載荷重q' が加われば、領域Ⅰの平均垂直応力は、

σ.=q'+(γb/2)tan(45゜+φ/2)
まさに破壊せんするときの支持力qc は、図−8.8のモ−ルの円と(8.6)
式の考え方から、

qc={q'+(γb/2)tan(45゜+φ/2)}tan(45゜+φ/2)・・・(8.7)

この式から、載荷重q' が小さいものであっても、tan(45゜+φ/2)が
乗ぜられた形で支持力の増大に寄与していることがわかる。



長方形基礎の支持力は、帯状基礎の場合と同じようにして見いだされる。
ただし、この場合、幅(b)は長方形のせまい方の一辺をとり、正方形はそ
の一辺を用いて算定すればよい。
また、基礎が地表面下Df の根入りを持っているときは、支持力は当然増
すが、フ−チングの底面より上の土のせん断強さを無視すれば、載荷重は
q'=γ・Dfで表わされる。

8.2.4 不飽和粘土の支持力
飽和していない粘土のせん断強さは、
τf=c'+σ・tanφ' で表わされるから、幅bの帯状基礎の支持力は、
砂質土の場合の支持力を求めたのと同じようにして、次の公式が得られる。



ここに、q':載荷重の強さ(t/㎡)
γ:土の単位重量(t/m3

また、正方形のフ−チングに対しては、

これらの支持力公式は、テルツァギ−やホゲントグラ−によって誘導され
た式の変形である。基礎の下の土の破壊面が、平面であるという仮定は、実
際の破壊と多少異なるが、解析の方法は簡単で合理的であって、より厳密な
仮定の上に立って導かれた式と割合よく合う。また、これら不飽和土の公式
は、地盤の支持力が基礎の幅、根入り(載荷重)および土の単位重量などに
よって変化するものであることをよく示している。

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