■私のコンクリート補修物語
第2部 アルカリ骨材反応 堀 孝廣

2.5 アルカリ骨材反応の見分け方

 コンクリート構造物に入っているひび割れが、アルカリ骨材反応によるひび割れであるかどうかを、どうやって見分けたら良いだろうか。 骨材が有害であるかどうかの判定には、前述した化学法、モルタルバー法が一般に用いられるが、アルカリ骨材反応を見慣れた人にとっては、その構造物の劣化状態を見ただけで、ほぼ100%の確率で判定することができる。 最初に写真でお見せしたような亀甲状のひび割れは、無筋に近いコンクリートやかぶりの非常に大きな構造物で見られるが、必ずしもそのような例ばかりではない。

 以下に、私が経験的につかんでいるポイントを記そう。

(1) その地域は、アルカリ骨材反応危険地域かどうか。
 このことをまず念頭に置いておかなければならないが、あまりこだわり過ぎてもいけない。アルカリ骨材反応は、隠されている場合や誰も気づいていないケースもある。日本における反応性骨材の分布図を示す。図中黒く塗りつぶしてあるヵ所が反応性のある岩石が高率で含まれる恐れのある岩体を示している。これをみると、日本全国どこで起きても不思議はない。コンクリート製道路縁石に長軸方向に沿ったひび割れが見られる地域は、一応疑ってかかった方が良い。

(2) ひび割れは網目状か。長軸方向に沿って入っていないか。
 無筋に近いコンクリートでは、ひび割れは亀甲状に入るが、膨張が鉄筋で拘束される場合には、長軸方向に沿って入ることが多い。下の写真を見ていただくとわかると思うが、柱、梁のセンターの部分に長軸方向にひび割れが入っている。これは主筋方向の膨張は鉄筋拘束により抑制されるため、フープ筋方向に膨張力が働き、ちょうどそのセンターの部分に力が集中した結果である。通常の乾燥収縮のひび割れが軸方向に垂直にほぼ等間隔で入るのと顕著に異なる点である

(3) ひび割れ幅が異常に大きくないか。ひび割れ部に段差が生じていないか。
 コンクリートの乾燥収縮率は通常0.1%以下であるのに対して、アルカリ骨材反応のよる膨張率は往々にして0.5%程度にまで達する。 従って、乾燥収縮のひび割れ幅は概ね0.5mm程度に止まるのに対して、アルカリ骨材反応によるひび割れは、無筋に近い状態のコンクリートでは、たばこが1本が丸ごと入ってしまうようなことが良くある。また、コンクリートがせりあがるようにして膨張するため、ひびわれ部に段差を生じていることがある。

(4) 雨がかり部にひび割れが集中していないか。
 アルカリ骨材反応の進行には、水が供給されることが必須条件である。一つの構造物の中で雨かかり部にひび割れが集中していたら要注意である。但し、凍害危険度の高い地域では、同じようなひび割れであるため、判断が難しい。

(5) コンクリートがピンク色に変色していないか。
 この原因はよくわからない。コンクリートのアルカリ性が高いことが影響しているものと思われるが、なぜかアルカリ骨材反応を起こしているコンクリートはピンク色になっていることが多い。

 その他にも幾つかポイントがあるが、前記①~⑤の複数項目に該当しているようであれば、アルカリ骨材反応を疑っても良い。


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