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水の話
■水の話 ~化学の鉄人小林映章が「水」を斬る!~
1章 水の構造と性質 小林 映章

1.1 水の構造

1.1.5 軽水と重水
—水の中には普通の水H2Oと若干異なる水が混ざっている—
この節は通常の水の使い方では重要でないので無視して頂いて結構です。
(軽水と重水)
 水を作っている水分子は水素原子2個と酸素原子1個から出来ていますが、水素と酸素には大多数を占めている原子の他に、重さが異なった原子が少量混ざっています。その結果、ただ水といっても通常の水H2Oの他に、これよりも重い水がわずかに含まれています。両者を区別するために、普通の水を「軽水」、重い水を「重水」と呼んでいます。重水の代表的なものは、普通の水素Hの代わりに、これよりも質量が2倍の水素D(重水素)が入ったD2Oです。普通に重水というときにはD2Oを指しています。

(軽水と重水の比較)
 表1に軽水と重水の物理的性質等を比較して示しました。

表1 水と重水の比較

(軽水と重水の性質の違い)
 表1のように、軽水(実際上、通常の水と考えてよい)と重水D2Oでは性質に差はありますが、同じように無色透明で、屈折率もあまり変わりがありませんので、見かけはほとんど差がありません。また化学的な反応性や溶媒としての性質にも差がありません。したがって、微量の重水の存在が通常の水の性質に影響することはほとんどありません。勿論この存在でコンクリートの性質が変化するなどということはあり得ません。

 重水の最大の用途は、原子力利用で、中性子が重水中の重水素に衝突して速度を落とすのを利用して、減速材として使われています。また、重水から重水素を取り出して核融合に使用することはよく知られているとおりです。

(重水の生体への影響)
 ヒトの場合重水が影響を及ぼしたという報告はありません。ネズミでも通常の水を15%重水で置換しても異常を示さなかったといわれています。しかし、30%を越えると死に至るそうです。100%重水中では、カエルの筋肉が収縮しないし、バクテリアも増殖が著しく遅くなるそうです。


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