■亀の子コンクリート考
第二回:コンクリートはプラスチックよりもつよいか 小林 映章

前回コンクリートの強度は必ずしもプラスチックの強度よりも大きくないのではないかということを述べたが、便覧等に記載されている数値をもとに両者を比較してみよう。

コンクリートとプラスチックの強度比較

種類 強度(kgf/cm2
圧縮強度 引張り強度 曲げ強度
コンクリート 通常コンクリート 200~400 圧縮強度の
1/13~1/10
圧縮強度の
1/8~1/5
高強度コンクリート 600~1300
超高強度コンクリート     ~2700
プラスチック メラミン樹脂 1800~3100 500~940 720~1150
エポキシ樹脂(注型) 1150 860 1350
ポリビニルホルマール(ビニロン) 650~860
ポリエステル(硬質) 1530 250~720 610~1200
スチレン・ブタジエンゴム 220~500 360~1080
ポリエチレン 360~700 90 60~290
ポリクロルトリフルオロエチレン  2300~5760 410 600
ポリテトラフロオルエチレン 120 130 120
ポリ塩化ビニル〈硬質〉 700~910 580~650 560~1120
アセチルセルロース 940~2600 140~610 140~1150
セルロイド 1580~2520 500~580 650~790
ナイロン(射出成型品) 940 780 1050

通常のコンクリートの圧縮強度は、プラスチックと比較すると半分にも満たない。高強度コンクリートでほぼ匹敵する程度である。引張り強度や曲げ強度にいたっては1/10程度である。筆者が子供の頃は今のような合成プラスチックは未だ市場に現れておらず、玩具にしても下敷き、筆箱といった学用品にしてもセルロイドで作られているものが多かった。合成プラスチックが市場に出るようになると、セルロイドは燃えやすいといった欠点のほかに、すぐ壊れてしまうため忽ちにして我々の前から姿を消してしまった。数値だけから見るとコンクリートの強度はセルロイドに劣ることになる。

コンクリート構造物の強さのもとはその形状の大きさと重量の大きさにあり、それに日光、風雨といった自然の侵蝕エネルギーに対する耐久性が著しく優れていることが特徴である。すなわち、コンクリートは頑丈であり、プラスチックや木材は強靭である。こんなところに両者が互いに補い合える接点があるかも知れない。プラスチックはコンクリートの補強に使えないのだろうか。次回はこんな点に触れてみたい。


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