Re: 練り上がり温度によるスランプの違い

ミート wrote.

>夏場と冬場では生コンの練り上がり温度が違います。
>当社の場合、だいたい冬場１０℃　夏場３０℃近くにまでなる事があります。
>この場合、温度差が２０℃ありますが、
>同じ配合で生コンを製造した場合、夏場も冬場も練り上がり時のスランプは同じなのでしょうか。
>夏場の方が硬く出ると思うのですが、大先輩は変わらないっていいます。
>どうなんでしょうか。教えて下さい。お願いします。

　全国生コンクリート工業組合？発行の品質管理ハンドブックの第４章配合設計では、「季節による練りあがり時のコンクリートの温度変化に伴う修正」の項で以下の通り述べている(ここで重要なのはスランプロスのことではなく、練りあがり時の差のことと明確に示していること)。
　「一般に練りあがり時のコンクリート温度が高くなるとスランプが低下するために、単位水量の増加を招き、更にセメント水比と強度の関係も若干変化が生じる・・・・」このため、「単位水量については、練りあがり時の温度20℃の標準配合に対して、温度差±10℃あたり±3〜5kgの修正が目安となる。」「コンクリートの４週圧縮強度については、練りあがり時20℃の標準配合に対して温度差10℃あたり、水セメント比の値としてAE減水剤コンクリートで2〜3%、AE剤コンクリートでは2〜6%程度の修正が目安となる。」
　したがって、ミートさんの考え方が正解。
　次に、コンクリート温度が上がった場合のスランプの低下原因であるが、これはセメントの水和の温度依存性によるものと考えられている。
　まず、こう考えてみるのが一番わかりやすいかもしれない。コンクリート温度が高いほど、コンクリートの凝結や初期の強度発現は早くなる。これには異論のある方はいないと思う。これは、言い換えればセメントの水和も一種の化学反応であり、一般的な化学反応は温度が高いほど活発になるからである。したがって、セメントの水和は温度が高いほど、反応速度は速くなり、時間当たりの反応量は大きくなる。
　ここで、セメントの水和メカニズムを考えてみると、どなたかがセメントの水和は接水後数時間はほとんどないとか書かれていたが、あれは大間違いである。、実はセメントの水和が最も活発なのは接水直後であり、セメント中のC3Aは水と接すると直ちに石膏と反応しエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)という大量の結合水を持つ針状結晶を生成、その後反応はしばらく緩慢となるが、数時間後からC3Sの反応を主体とする水和反応が再度活発化するという経過をたどり、凝結・硬化していく。もっとも、緩慢となるといっても水和が止まるわけではなく、この間もC3Aや一部のC3Sの水和は継続している。
　ここで、コンクリートの練りあがり時の粘性に影響を与えるのはこのエトリンガイトであり、温度が高いと水和が促進されるためエトリンガイトの生成量は増大、練り混ぜ水の一部が結晶水として固定されるとともに、練り混ぜ水中に流動性を阻害する針状結晶が大量に生成されるため、物理的にも流動性が低下する。また、さらにこれら水和物は比表面積が非常に大きいため、水和物に吸着・固定される減水剤成分も増大するため、さらに流動性は低下する傾向をたどると言うことである。
　ちなみに、どなたかがセメント成分が溶解すると泡がはいりにくくなってうんぬんとか書かれていましたが、あれも間違い。なぜならば、一般の物質は水の温度が上がれば溶解度が上がりますが、セメントの接水後溶解生成する水酸化カルシウムや硫酸カルシウム(石膏)などのカルシウム塩は、水温が上がるほど溶解度は低下するという珍しい物質なのです。したがって、この方の理屈によれば温度が上がれば、カルシウムイオン濃度が下がるので混和剤は効きやすくなり流動性は向上するはずたが、そういう傾向にはならないことは前述の通り。

ミネルヴァ

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2009-04-30 08:26:33

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