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水の話
■水の話 ~化学の鉄人小林映章が「水」を斬る!~
1章 水の構造と性質 小林 映章

1.2 水の性質

1.2.5 水の注目すべき特性(4) —表面張力—
—水は玉になりやすい—
 雨滴も水道の蛇口からぽたぽた漏れる水滴もみな玉になっています。これは水にできるだけその表面積を小さくするような力が働いているからです。この力を表面張力と言います。

(表面張力とは)
 学生時代にかえったつもりで、表面張力とはどういうものか簡単に振り返ってみましょう。表面張力が生じるのは、液体分子に働く分子間引力(分子同士が引き合う力)が液体の表面と内部では違うからです。この関係を分かりやすいように平面図で、模式的に図6に示しました。


 図で液体分子は円で示しました。図で着色した分子に着目してみます。内部の分子には左右上下共に等しく引力が働いています。しかし、表面の分子は左右および下方の分子と互いに引き合っていますが、上には引かれていません。このように表面の分子では内側に引かれる力が大きくなります。この引力のアンバランスが表面張力の元です。図6から分かるように、分子配置がどの液体でも同じとすると、分子間力が大きい液体ほど表面張力は大きくなります。

(水の表面張力)
 それでは水の表面張力の大きさをを私達の身近にある他の液体と比べてみましょう。その結果を表8に示しました。(表面張力は、通常単位長さあたりの力で表します。)


 水の表面張力はエタノール、ベンゼンなどの液体と比べて非常に大きいことが分かります。水分子の間に存在する水素結合により水分子が互いに大きな力で引き合っているからです。

 身近のところで、水より表面張力が大きい液体は水銀ですが、水銀の表面張力が非常に大きいのは水銀原子が金属結合により強く結ばれているからです。溶融した鉛や鉄も同様の理由により大きな表面張力をもっています。


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